
寝ぐせの王様、ミクジンです
この記事は、オレの心に響いたものを勝手に紹介するワガママシリーズです。
back number『水平線』
この曲は2021年1月17日現在、YouTubeのみで公開されている曲です。
初めて聞いた時に心の奥から湧き上がる不思議な何かを感じ、情けねえことにちょっと目から水が出そうになったけど、それがなんなのか分からなくて何度も何度も聞きました。
その後に曲が制作された背景を知った時、この曲から感じるものがなんなのか、なんとなくだけど分かったような気がしました。
これはオレの自分勝手な解釈だってのは分かってますが、なんだか書かずにはいられなかったので、今回は『水平線』を聞いて思ったことを書きなぐろうと思います。
目次
back number『水平線』
2020年8月18日公開。
この曲が公開された年は、新型コロナウィルスで世界的に大きな影響が出る中、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)が史上初の中止となりました。
そんな中、開催に向けて尽力してきた高校生たちからback numberに手紙が届いたそうです。
学生時代、自身も陸上競技でインターハイを目指していたボーカルの清水依与吏さんは、
- 開催県が地元・群馬県であったこと
- 開会式で『SISTER』が演奏される予定だったこと
を知り、彼ら彼女らのために何かできないかと考え、急遽制作したのがこの『水平線』だそうです。
本来ならインターハイが行われるはずだった8月18日に『水平線』を公開したback number。
ボーカルの清水依与吏さんは、次のようなコメントを残しています。
費やし重ねてきたものを発揮する場所を失くす事は、仕方ないから、とか、悲しいのは自分だけじゃないから、などの言葉で到底納得できることではありません。
選手達と運営の生徒達に向け、何か出来る事はないかと相談を受けた時、長い時間自分達の中にあるモヤモヤの正体と、これから何をすべきなのか分かった気がしました。
先人としてなのか大人としてなのか野暮な台詞を探してしまいますが、俺たちはバンドマンなので、慰めでも励ましでも無く音楽をここに置いておきます。
back number清水依与吏
費やし重ねてきたもの
『費やし重ねてきたもの』を失うのは、言葉では表せられないくらい本当に辛いことだと思います。
費やすことができるのも重ねられるのも、目指す目標がそれだけ大事で、好きで、本気だったからこそできることだからです。
それが目標にたどり着く前に消えてしまったとしたら、「何もかも失ってしまった」と思っても仕方ないのかもしれません。
だってそれが、今の自分のすべてだと思うくらい大事だったはずだから。
オレも生きてきた中で、何度か『費やし重ねてきたもの』を失う経験をしました。
なんとかならないかと考えたし、そのために自分ができること、思い付くことはすべてやりました。
でもどんなにがんばっても二度と戻らないと知った時には、たぶん絶望しかなかったと思うし、なんならもう「未来なんかない」とさえ思った。
未来なんかないのに、前になんか進めないのに、勝手にどんどん進んでいく時間が、頼んでもないのにやってくる朝が嫌だった。
誰かが綺麗と呟いてる
水平線が光る朝に
あなたの希望が崩れ落ちて
風に飛ばされる欠片に
誰かが綺麗と呟いてる
back number『水平線』
本当なら気持ちがいいはずの朝日が、自分にとっては「何もない苦痛の1日」の始まりを告げるサインのようで、本当に嫌でした。
暗闇の中にいる方が楽に思えたし、そうするために時間が止まって欲しいと思ってた。
だけどある日、ある人の言葉を聞いて気持ちが少しだけ変わりました。
その人の言葉は、
「今までがんばったね、だから少し休んでもいいんだよ」
と言ってくれているようでした。
その言葉を聞いて初めて分かりました。
そうか、オレはがんばっていたんだと。
失って「もう何もない」と思うほどオレはそれを大事に思っていたし、思えばそのために他のすべてをガマンしていました。
がんばっていることに気付かないくらいそれに夢中で、がんばってがんばって、ただがんばっていた。
だから今は、きっと疲れているだけなんだ。
それに気付けた時、心の中にあった重いものが少しだけ軽くなったような気がしました。
そして同時に、全部失くした何もない自分を、行く場所が分からなくてうずくまっていた自分を、やっと見つけてもらったような気がした。
その時に分かったんです。
オレは暗闇でうずくまっていたかったわけじゃない、本当は前に進みたかったんだって。
あなたはそれを見るでしょう
悲しい声で歌いながら
いつしか海に流れ着いて 光って
あなたはそれを見るでしょう
back number『水平線』
それでもまだしばらくはどこにも行けずにいたけど、気が付いた時には、普通に笑えるようになっている自分がいました。
いつそうなったのかは覚えてないけど、朝がくればカーテンを開けて、あんなに嫌だった朝日を浴びて、気持ち良く背伸びまでするようになりました。
そして今思います。
あの言葉をくれたお兄さん、そして自分に対して、ありがとうと。
あの言葉がなかったら、オレはたぶんずっとうずくまったままだったと思います。
そして当時の自分があの苦しい時間を耐えてくれなかったら、今の自分はありません。
自分から朝日を見ることも、照らされて気持ち良く背伸びをすることもなかった。
当時の自分は「朝が嫌だ」と思ってたけど、本当はこうして日を浴びて、気持ち良く朝を迎えたかったんだと思います。
でもそれが『自分の本当の気持ち』だということにも気付けていなかった。
だけどあの言葉のおかげで今はそれに気付けたから、朝が来るのが楽しみになりました。
どんな時でも日は昇る
なんか気付いたら自分のことを長々と書いてしまって正直びびりました…。
でもオレがこの曲から感じたのは、うまく言えないけどそういうことなんだと思います。
『水平線』は励ましでも慰めでもなく、寄り添ってくれる歌のような気がします。
人生ってのは不思議なことに、簡単に希望が崩れ落ちることがあって、それなのにどれだけ辛くても、苦しくても勝手に時間は進んでいきます。
それに納得できなくて、いつの間にか全部見失って、自分にさえ聞こえない声で必死に叫ぶ時もある。
だけどそうやって悩むことで、本当の自分を知ることもあります。
そしていつかまた笑える日が来たら、気付くはずです。
どんな時でも必ず日は昇って、暗闇にいる自分を照らしてくれていたことに。
本当は失くしたくなんかなかったんだけど、がんばった自分に、乗り越えてくれた自分に「ありがとう」と言って、また歩いていこうかな。
高校生たちもいつか、そんなふうに思えてたらいいなぁ。