『人生で初めて結婚したいと思った彼女。その出会いと別れ④』転勤と彼女の家出

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ミクジン
ミクジン

寝ぐせの王様、ミクジンです

警察のおじさんに応援を受けながらの遠距離恋愛でしたが、彼女の両親との初対面の日、親父さんにぶん殴られる事件が発生。

親父さんとうまくやっていけるか不安になるオレでしたが…。

それでは続きを。

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牛使いにオレはなる

前回、ぶん殴られて流血しながらも冷静になってから思った事。

『あんな理不尽な暴力親父の家なんか二度と行きたくねぇ』


しかし、当時のオレは若かった。

勢いがあった。

なんと言っても『彼女への愛』があった。


「ガマンだオレ!次からはもっと早く帰ってこい、って言ってたのを思い出せ!二度と来るなと言われたわけじゃねぇ!それに一回殴られたからもう耐性付いたろ!?」

そう自分に言い聞かせました。


今考えるとすげーなと思います。

もうそんな気力はないな…。

殴られ耐性なんかつくかボケ。


次の週からさっそく、死ぬほどビクビクしながらも土日のどちらかは家にお邪魔するようになりました。

といっても両親は昼飯以外は仕事。

仕事してる間は彼女と二人で家にいるわけにもいかないので、それとなく仕事場を見学。


牛、牛、牛。

牛ばっかり…そして臭いがすげえ。

緊張して気付かなかったけど、両親からも、ついでに家の中も、同じような牛の臭いがしてました。

両親にいたっては接近を臭いで感知できるレベル。

両親というより、もはや牛です。

牛の臭いの威力はすごすぎる。


結構な長時間見学してたけど、それについては特に何も言わない暴力親父。

「邪魔だ」と言われるかと思ったけど、意外にも何も言われませんでした。


それどころか何回目かの見学の時、

「お前何回も見に来たりして牛に興味あんのか?手伝ってみるか?」

暴力親父からまさかのお誘いが!


「はい!やってみたいっす!」

オレは即答しました。


ぶっちゃけこれを待っていたのです。

仕事以外ではまったく口を開かない暴力親父の心を開くには、仕事を手伝うのが一番だと思ったのです。 

暴力親父はものすごくぶっきらぼうではあったけど、仕事を教えてくれました。

オレはというと、喜びとビクビクが入り混じりながら必死に仕事を覚えたっけなぁ。


それから毎週仕事を手伝いました。

土日のどちらかは彼女とデート。

どちらかはビクビクしながら牛の世話。

彼女の家に行くのは相変わらず怖かったけど、なんとなく満ち足りた毎日でした。

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山形へ転勤させてもらう

月~金まで自分の仕事。

金曜日の夜~日曜日まで山形。

日曜日の夜に仙台に帰ってきて、月曜日からまた自分の仕事……ゆっくり休んでいる日がまったくない毎日。

半年ほど経ったあたりで、さすがに体に疲れが溜まってきてることに気が付きました。


自分の仕事に行くのにほぼ毎朝寝坊して遅刻ギリギリだし、仕事中も眠くて仕方がない。

このままではマズイと思い悩み、本社の上司に今の自分の現状を話しました。

すると上司は言いました。


「話は分かった。様子がおかしいと思ってたんだよ最近。そりゃ彼女も仕事も大事だもんな。話してくれてよかった。それで、山形に営業所があるんだが転勤できるかどうか上と話をしてみようか?」


マ、マジですか!

最悪仕事を辞めて山形に住むことまで考えていたので、願ってもない解答でした。


ただ、山形の営業所があるのは山形市。

彼女の実家は高畠町。

山形市から高畠町までは約60キロ。

車で1時間くらい。

それでよければ、という話でした。


仙台市にいても山形市に転勤しても、遠距離といえば遠距離。

だけどオレにとっては、会社を辞めることなく今までの半分の距離に近づけるので文句はありませんでした。


でもこの時はまだ気付いてなかった。

相手に合わせ過ぎて、後々自分を苦しめることになろうとは。

それから1ヶ月ほどで転勤が決まり、オレは山形市へと住むことになりました。

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再び殴られる

山形市のアパートへ引っ越し、新たな職場で働きながら彼女の家にも毎週通いました。

がんばれば日帰りもできる距離だったけど、ガソリン代節約のために寝泊まりは相変わらず公園の駐車場。


警察のおじさんに転勤してきたことを話すと、

「少しは近くなってよかったな」

と喜んでくれました。


毎週手伝いに行ってるので、この頃にはさすがに両親ともだんだん打ち解けてきました。

暴力親父ともだいぶ話せるようになっていたのです。


オレが山形市へ転勤してきたことを話すと、

親父「おう、前よりはうちに通いやすくなるな。なんかあった時のために住所教えとけや。駆け付けるからよ」

そんな奇跡の言葉が。

まだまだビクビクでしたが、喜んで住所を教えました。


そしてしばらく経ったある日。

自分の仕事が終わってアパートに帰ると、部屋には彼女の姿がありました。


オレ「あれ、どうしたの?」

彼女「今日お父さんとケンカして家出してきちゃったの。うぅ、どうしよ」


彼女は思いっきしへこんでいる様子。

あの暴力親父とケンカして家出するなんて…後が怖いのではないかこれは。


彼女「…とりあえずさ、夜ご飯作ってたから食べよ!あ~やだやだ!」

オレ「あ、うんそうだな。食べながら話聞くよ」

彼女の作った『野菜しゃぶしゃぶ』を食べながらオレは話を聞きました。


…話の前に『野菜しゃぶしゃぶ』とは何かを説明しておきます。

カセットコンロの上の鍋で湯を沸かし(ダシなどは入れない)、その湯の中に野菜を入れて、頃合いになったらポン酢で食べる料理です。

えぇ、ただのお湯にひたした野菜です。

なぜあんなに美味かったんだろう…彼女は不思議な料理を作る人でした。


別の日だけど、仕事から帰るとテーブルの上にはガスコンロと鍋に水、そして豆腐が置いてあったこともありました。

「やつめ…いつの間に来てたんだ」

そう思いながら置いてあったメモ書きを読むと、

『喜べ、夜ご飯作っておいたぞ!湯豆腐だ!』と。

悔しいけどクソ美味かったのを覚えています。

…そうか、あれが魔法の料理か。


…話がだいぶそれました。

彼女が親父とケンカになったのは、家を継ぐかどうかの話になったせいだそうです。


親父的には毎週オレが手伝いに来るのを好ましく思っていて、オレを婿に入れてもいいと言ってるらしい。

だけど彼女は家を継ぎたくない。

出来ればオレと家を出て暮らしたい。

そこで意見がぶつかってケンカになったと。


彼女「私はあの家でずっと暮らすのは嫌。あなたはどうしたい?」

オレ「…オレも外で暮らしたいよ。ただお前が家を出ていくとなると、親に縁を切られるんじゃないか?それでもいいのか?」

彼女「…だよね。あんな親嫌いなんだけど、でも親だからなぁ。う~ん」

オレ「無理はしなくていいからね。そこを覚悟できなきゃ外に出ても後悔することになるかもしれないし。簡単に出せる答えじゃないし、オレは待つよ。そしてオレからも説得してみる」


彼女が外に出るには『親子の縁を切られる』ことを覚悟しなきゃいけない。

それは簡単に決められることじゃない。


オレ「粘って何度も話をしたら分かってくれるかもしれないしさ」

彼女「うーん、まぁそうだね。頑張って心の中整理してみる。とりあえず落ち着くまでここにいていい?…ごめんね、面倒くさい家で」

オレ「いいよ謝んなくて。しょうがないじゃんそんなの。なんとかするしかないなら、なんとかできるように一緒に考えるべ」


そんな話をしていた時でした。

ピーンポーン。

チャイムが鳴りました。


ドンドンドン!!!

扉を激しく叩く音。

彼女とオレは顔を見合せました。

…まさか。


見なくても誰なのか分かりました。

絶対に暴力親父だ!!

やばい!住所教えてたんだ!!


親父「開けろ!!いるんだろ!!」


あわわわわ…。

やばいこれどうなるのこれ怒ってるよこれ。

もうどう考えてもこの後の展開がアレしかないのは分かってたんだけど…オレは仕方なくドアを開けました。


ドガッ!!!

(オレが殴られる音)

ドアを開くなり問答無用で殴られ、台所に倒れるオレ。

ま、またこれか…。


親父「やっぱりここにいたか!!おい!帰るぞ!!」

オレを無視して彼女に詰め寄る暴力親父。


彼女「来ないで!!なんで殴るの!!悪いのは私なのに!!そんなだから家を出たいんだよ!!」


親父「うるせぇ!!親の言うこと聞け!!」

そう言って親父は彼女の手を持ってギリギリ外へ連れ出そうとする。


オレ「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。彼女だっていろいろちゃんと考えて悩んでるんですから、聞いてあげてくだ…」

親父「だまれ!!」


ドガッ!!!

(もう一発)


親父「とりあえず車に乗れ!話はそれから聞く」

彼女「離して!!」


彼女はものすごい力で暴力親父に連れ去られました。

オレは…情けないことに勢いに圧倒されたのと痛みでそれ以上は動けなかった。

ただものすごく悔しかった。


この時どうすればよかったんだろう?

無理やりにでも追いかければよかったのかな。

今だに正解は分かりません。

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