『人生で初めて結婚したいと思った彼女。その出会いと別れ③』警察のおじさん

遠距離恋愛で狂気の節約生活

彼女は山形県高畠町にある実家へ帰り、遠距離恋愛が開始。

当時オレの仕事は土日休みだったので、毎週金曜日の仕事が終わったあと車で高畠町へ向かい、日曜日の夜に帰ってくるという生活が始まりました。


彼女の家までは車で行くと約2時間。

よく毎週欠かさず行ってたなぁと思います。

彼女と相談して、彼女の家には少しこの生活に慣れてから自己紹介と挨拶をしに行こうと決めました。


向こうで寝泊まりするのは自分の車の中。

大きな公園の駐車場があったので、そこで車中泊をしてました。

就職したてでまだそんなにお金もなかったし、将来に向けて節約したかったのもありました。


お風呂は駅に大衆浴場があったので、金土日のうち1日だけ利用。

それ以外は基本、水に濡らしたタオルで身体を拭いてました。

そう、節約のためです。


「くせえまま彼女に会って大丈夫かな」という心配もあったけど、彼女は「ナイスガッツ!」と親指を立てて笑えるだけ笑い、まったく気にしていない様子でした。

…心配しろよ!


それにしても車中泊、雪の降らない時期はいいけど、冬は大変だったのを覚えています。

自分の車、暖房と冷房が壊れていたのです。

自然の風しか出ませんでした。


しかも場所は雪国の山形。

冬になると雪が積もるのは当たり前で、運が悪いと平地でもマイナス10℃とかになります。

自然の風出してたら死にます。


なので夜は防寒具を身にまとい、毛布にくるまって車で寝てました。

車の暖房なおせよ!と言われるのは承知の上です。

すべては節約のため。


…と、当時思ってましたが、

頭おかしいな当時の自分。

って正直思いますね…。

 
そんな狂気の遠距離恋愛だったけど、ある日とても嬉しい出会いがありました。

警察のおじさん

とある雪の降る夜に毛布にくるまって寝ていたら、車の窓をコンコン叩く音が聞こえました。

ん?なんだろう?


オレがその時車を停めていたのは、誰もいない公園の大きな駐車場。

夏でも夜になると誰もいないのに、こんな雪の積もる夜にオレの車の窓を叩くなんて…誰なのこわいっ。


そう思っていると、窓越しに懐中電灯で顔を照らされました。

そして外からかすかに、

「警察だ、窓を開けなさい」と声が。


仕方なく窓を開けてみると、声の主はやはり警察のおじさんでした。

さ、寒っ!


警察「お兄さん、こんな日にこんなとこで車で寝て…一体どうしたのかな?」


警察には相当怪しく見えたでしょう。

雪の積もる氷点下の夜に、公園の駐車場で寝てる人なんか他にいませんから。


オレは事情を正直に話しました。

自分は宮城に住んでいること。

遠距離恋愛をしてて、ここで毎週車中泊をしていること。

ここで寝泊りしてるのは節約のためだということ…。


警察「なるほど頑張るなぁお兄さん。ここで寝るのは別に構わないんだけど、凍死しないように気を付けてな」

免許証などを見せたあと、警察のおじさんはそう言ってパトロールに戻っていきました。


優しい感じのいい人だったなぁ。

宮城じゃこんな警察の人見たことなかった。


警察のおじさんが去ったあと、さて寝るかと目をつむりました。

ところが少しするとまたもや窓をコンコンする音が。


見るとまたさっきの警察のおじさん。

今度はなんだろう?


オレ「今度はどうしたんですか?」

警察「いや今晩は特に冷えるから、ほれ」


渡されたのは暖かい缶コーヒー。

これを買って戻ってきたのか…。

缶コーヒーを握りながら、なんだか泣きそうになったのを覚えています。


その日から、警察のおじさんは毎週やってきては差し入れをくれました。


警察「オレが見回ってるから安心して寝な。応援してるから頑張れな」

そう言って。

あの警察のおじさんにどれだけ元気をもらっただろう。

感謝の気持ちは今でも忘れません。

彼女の父親に殴られる

そんなこんなで遠距離恋愛にも少し慣れてきて、彼女の両親にとりあえず自己紹介と挨拶をしに行くことにしました。

結婚を前提にお付き合いしてます、と。


当日はめちゃくちゃ緊張しました。

厳しい両親だと何度も聞いていたので…。


手土産を持って彼女と家に入りました。

茶の間には母親と父親の2人。

どちらも真剣な顔。


こここ、怖えええええ…。

特に父親はもう見た目からして強面。

すでに怒ってらっしゃるのかしら…。

怯えながらもなんとか挨拶して自己紹介をすると、父親が真面目な顔で言いました。


父「娘がはじめて連れてきた彼氏だ、これからよろしくな。オレ達はこれから牛の世話しなきゃなんねぇ。お前らはどっかに遊びに行ってこい。言っとくが、間違っても娘の部屋で2人で過ごしたりすんなよ。まだ早い

そう言って父親は外へ出て行きました。


ひぃいいい…

とりあえず認めてもらったみたいだけど、目が笑ってねぇ…。

笑顔も一度も見てないし、思った以上に怖い感じでした。

心の扉ダイヤモンドやん…。


母「お父さんの言った通りにしてね。怒ったら怖いからさ。ごめんね、緊張したでしょ。外で楽しんでおいで」

母親もそう言ったあと外へ出て行きました。


怒ってなくても怖いですぅうう…。

母の方は父がいなくなったとたんに優しい雰囲気になりました。

父の方には逆らえないようなこの雰囲気。

こりゃ怒ったらヤバいんだろうな父親…。


そんなこんなでやっとこさ初対面も終わり、言われた通りに家を出て、外で彼女と時間を過ごしました。

そして気が付けば夕方の16時30分。


当時彼女には18時という門限がありました。

「今日は初対面の日だし早めに帰ろう」と彼女と話をして、17時頃には家に着くように彼女を送りました。


…家が近づいて来たところで、誰か家の前に腕組をして立っているのが見えました。

誰だろう?

近づくとそれは彼女の父親でした。

どうしたんだろうと思い車を降りると、


父「遅いっ!!何やってたんだこらっ!!」


ものすごい剣幕でオレに掴みかかり、思いっきりグーで殴られました…。

ドラマみたいに倒れこむオレ。

まだ殴ろうとする父親を、必死で止めに入る彼女。


いってぇ…。

なにこれ?

なんで?

意味がわかりませんでした。


時間は17時少し前。

だいぶ早く連れてきたつもりなのに。


父「次からはもっと早く帰ってこい!!」

彼女に止められ、そう吐き捨てて家に入っていく父親。


彼女「大丈夫?…じゃないよね。ごめんね、あんな父親で…。今傷バン持ってくる」


オレは放心状態でした。

口の端から血が出てるのも気付かなかった。

殴られた理由がわからなすぎて。

あまりにも理不尽だと思うのだが。


その後彼女に手当てしてもらい、その日はとりあえず公園の駐車場に帰りました。

夜になって警察のおじさんが来ると、顔に傷バンを付けたオレを見てすごく心配してくれたっけ。

その後長々と話を聞いてくれて嬉しかった。

仕事中にごめんなさい、おじさん。


流血の初対面はこうして終わりました。

オレやっていけるかな、あの父親と。

ものすごく不安になった日でした。

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