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桜が咲いている期間は短い。
だからか、ふだんまったく気にもしないし見てもいないのに、春が近付くといつ花が咲くのかと気になったりする。
親しい人とお花見に行きたいなぁなんて思うのもあるかもしれない。
花が散ってしまえばまた気にもしなくなるのに、都合のいいやつだなぁと自分で思いながらも毎年これを繰り返してきた。
でも、今年は少し違った。
花のことは二の次だったのかもしれない
今年は不思議なことに、桜の季節が近付いてきてもまったく気にもならなかった。
ニュースも見なかったし、ネットで開花の時期を調べることもなかった。
意識はしてなかったけどもしかしたら、毎年一緒に見ていた人がもういないからかもしれないなぁと思った。
この時期恒例になっていたお花見。
一応開花の時期は調べていたものの、お互いの都合があまり合わなくて、時期がずれて桜がまだ咲いてなかったり、もうほとんど散っていることも多かった。
それでも、ささやかな手作りの弁当持参で行くお花見は、花が咲いていなくてもすごく楽しかったのを覚えている。
たぶん花が咲いているかどうかなんて二の次だったんだろうな。
そう考えたらますます都合のいいやつだなぁと思った。
花は勝手に咲いていた
桜のことなんてまったく気にしていなかった今年だけど、ふと思い出して、通勤の時にいつもと違う道を通って見に行ってみた。
めちゃくちゃ咲いていた。
少し散りはじめてはいるけど、 こんなに咲いているとは思わなかった。
なんとなくまだ肌寒いし、もう少し先のことだと思ってた。
もうこんな時期なのか。
季節ごとにいつもやっていたことをやらなくなると、時間の感覚もおかしくなるらしい。
独りでいることにもう慣れたつもりでいたけど、まだだったってことなのかな。
そんなことを考えたりした。
花は咲く
オレがどんな状況で、どんな気持ちでいようとも、桜はそんなことおかまいなしに季節がくれば咲く。
そんなのは当たり前のことだけど、今まで考えもしないことだった。
まったく気にされてなくても、弁当ばっかり見られてても、桜は自分が咲く時期がきたのが分かったら容赦なく咲くし、まだだと思ったら咲かない。
そんな桜がすげーなと思った。
それに比べて自分はどうだろう。
桜のようにマイペースに生きれてるかな。
独りになったんだから時間はたっぷりある。
周りの声を気にして気持ちばかり焦っても、時期がきていなかったら咲いたところでまたすぐに枯れてしまうかもしれない。
自分が咲く時期を分かっているのは他人じゃない、自分なんだ。
同時に、ちゃんと咲いているかどうか決めるのも自分。
そして咲くのは結局、自分自身の力だ。
人生の季節は定期的には巡らない。
自分の歩く道に今花が咲いてなくても、そのうち時期がくれば咲く時がくる。
今はまだその時期じゃないだけなんだ。
もし他人から見て花が咲いてなくても、自分だけに見える花でいい。
その花をしっかり見てやろうと思った。
珍しくまじめにそんなことを考えて、それまで見ているようで見ていなかった桜のことを、初めてちゃんと見た気がした。