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寝ぐせの王様、ミクジンです
オレは心霊ものやオカルトものが大好きです。
ところが困ったことに極度のビビり。
それゆえ、大好きな怖いものを見たあとは、だいたい次のようになります。
- 一人じゃ電気を消して寝れない
- 誰かに泊まってほしくなる
- お風呂に入るのに決心がいる
- と言いつつだいたい風呂は諦める
- 勇気を出して風呂に入っても、頭を洗う時に意地でも目は閉じない
- トイレに行くのに決心がいる
- とにかく決心がいる
- もう寝れない
簡単に書くとこんなところでしょうか。
あまりにも怖がりすぎて、子供の頃家族に「もし死んでもお化けになって出て来ないでね」と、縁起でもないことを本気で頼んだこともあります。
そんなオレですが、こんなことになってしまった原因に心当たりがあります。
今回は子供の頃に体験した、その話を書いてみたいと思います。
7人で暮らしていた子供時代
オレは小学生の低学年くらいまで、家族全員ひとつ屋根の下で暮らしていました。
実家は二階建てで、家族構成はおっぴさん、じいちゃん、ばあちゃん、両親、オレ、弟の7人暮らし。
ちなみに『おっぴさん』というのは『曽祖父母(うちの場合はひいばあちゃん)』のことなんですが、どうやらこれは宮城県の方言らしく、それを知らなかったオレは結構な歳になるまで逆に、「ひいばあちゃんって何?」って思ってました。
実家ではおっぴさん(ひいばあちゃん)、じいちゃん、ばあちゃんが1階、両親とオレ達兄弟が2階で暮らしてたんですが、2世帯というわけではなく、1階だけにトイレ、台所、お風呂がありました。
で、夜は2階で寝てるわけですが、トイレに行きたくなると当然1階に降りなければなりません。
そのトイレへの道が、怖かった。
怖かった実家の夜
家の付近は夜になるとあまり車が通らないので、夜中には耳鳴りが聞こえるほど静かでした。
当時のオレはたぶん6歳くらい。
トイレに行くのに部屋の電気を付けようにも、当時は蛍光灯からぶら下がるヒモを引っ張って付けるタイプだったので、小さかった自分では届かないために付けられず…。
同じ部屋で寝ていた親を起こすと怒られる気がしたので、暗い中怖いのをガマンして歩きました。
しかし古い木造建築ゆえ、歩くたびにミシミシと音が鳴る床。
大きな音を立てたら、何かに気付かれてしまいそうな気がして怖かったので、オレはソッとソッと廊下へ向かいました。
廊下の照明には手が届くので付けられましたが、当時の廊下の照明は白熱電球。
正直、夜中の白熱電球の光ってのは、怖さを増幅させるための道具にしかなりません。
なぜか少し揺れてる時があったり、それで自分の影がユラユラ揺れて別の生き物に見えたり…。
増幅した恐怖に怯えながら恐る恐る階段を降りると、目の前には大きな鏡があります。
映るのは白熱電球に照らされた自分と、その背後に広がる暗闇。
こええ以外の何ものでもありません。
階段下の廊下を進むと台所がありますが、そこがまた意味不明の薄暗さ。
そして台所脇の廊下を進んで行くと、やっとトイレがあります。
当時でも近所では珍しく、お風呂を薪で焚くような古い家だったせいか、とにかく夜は暗くて、怖い雰囲気が漂っていた家でした。
なるべく夜中にトイレは行きたくなかったけど、どうしようもない時には勇気を振り絞って行っていました。
しかし。
ある日、恐怖の出来事が起こってしまったんです。
トイレの恐怖体験
その日も夜中に怯えながらトイレへと向かい、無事にドアの前に着いて少しだけホッとしました。
しかしトイレの電気のスイッチは中にあるため、暗いままドアを開けなければなりません。
怖いけど、サッと開けてサッと付けてサッと用をたしてダッシュで帰ろう。
オレはドアを開けました。
(ぎゃああああ)
ドアを開けた瞬間、黒い影が便器に座っているのが見え、オレは声にならない叫びを上げました。
本当に恐怖した時、人は声が出せないのかもしれません。
ビビりすぎてよくは覚えてませんが、この時オレはあまりの恐怖に腰を抜かしてしまったような気がします。
「どうしたんだい?」
恐怖で動けずにいると、突然、黒い影が話しかけてきました。
その声にオレはビクッと身体を震わせ、怖くて何も答えられませんでした。
すると黒い影が、照明のスイッチにゆっくりと手を伸ばしました。
パチッ。
「!?」
突然明かりが付いたので、オレは眩しくて目をつむりました。
そしてゆっくり目を開けてみると、そこには予想外の人物がいたのです…。
黒い影の正体
座っていた黒い影の正体は、うちのおっぴさんでした。
真夜中に電気も付けず、鍵も閉めず、下半身丸出しのおっぴさんがそこにはいました。
あああああああ!
オバケとは違う意味で見ちゃいけないものを見てしまったオレは、おっぴさんの下半身に向かってちゃんと悲鳴を上げました。
そんなオレを見て、便器に座ったまま心配そうな顔をするおっぴさん。
オレはというと、いろいろびっくりしたものの、「オバケじゃなかったんだ」とすごく安心したのを覚えてます。
しかしなんでまた真夜中に電気も付けず、鍵も閉めずに用をたしていたんだろう。
おっぴさんに聞いてみると、返ってきた答えはこうでした。
「電気を付けるのがもったいない」
そうですか…
聞いた当時はちょっと意味が分からなかったけど、旦那を早くに亡くし、女手ひとつでおじいちゃんを育て上げた、苦労人のおっぴさんならではの言葉だなぁと今は思います。
ちなみにこれ以降、夜中にトイレに行くと何度もおっぴさんに遭遇しました。
中に誰かいたとしても、それはおっぴさんだってのは分かってるんだけど、それでもトイレのドアを開けるのはすごく怖かった記憶があります。
というのも、おっぴさんは耳が遠く、トイレのドアの前で呼んでも返事がないので、開けるまでいるかいないか分からない状態だからです。
めちゃくちゃこええですよこれ…。
トイレに行くまででも十分怖いのに、真っ暗なトイレの中におっぴさんがいるかどうかが分かんなくて怖かったという子供時代。
今思えば、子供のオレにとって夜の家の中は、いろんな意味でお化け屋敷でした。
もはやオバケが怖いのかおっぴさんが怖いのか分からなかったけど、ずっと怯えていたおかげで、立派な怖がりおじさんになりました。
もはやこれは自慢できるレベルです。
ビビりなら負けねーぜ?
あんなにビビらせてくれたおっぴさんだけど、いろんなことを教えてくれて、破天荒な生き方のおっぴさんがオレは大好きでした。
きっと今は静かに、オレを見守ってくれてるんだろうなぁと思います。
おっぴさん、オレが「もし死んでもお化けになって出て来ないでね」って言った時、笑顔で「はいよ」って言ってくれてありがとう