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寝ぐせの王様、ミクジンです。
前回は彼女の浮気を疑っていたある日、浮気の証拠を見つけてしまったところまで書きました。
それでは続きを。
浮気発覚。だけどまだ何かを隠す彼女
彼女のアパートで使用済みのコンドームを見つけたあと、あんまり覚えてないけど、オレはたぶんベランダのところでボーッとしていました。
そこへ帰ってくる彼女。
子供はもう寝ていたので、彼女が着替えなどを済ませた後に話を出しました。
「こんなもん見つけたんだけど」
ティッシュに包まれたそれを見せると、彼女は一瞬ビクッと体を震わせた。
すぐに顔が青ざめていくのが分かった。
「…ごめん」
彼女はなんの言い訳もしなかった。
「こないだ言ってた結婚を迫られたっつー彼か?」
「うん」
「そいつはなんなの?なんでこんなことになったの?」
彼女の話はこうでした。
相手の男は48歳でバツイチ、彼女が働いている営業所の所長。
彼女は入社直後、彼のアシストをしながら仕事を教わることになった。
だけど所長のはずの彼は、とてつもなく仕事のできない人だった。
法律的に引っかかるような案件をいくつも抱え、その営業所は摘発寸前だったそうだ。
それはやらなければならないことを、所長の彼がやっていなかったせいだった。
仕事ができない彼に、潰れそうな営業所。
しかし彼は「やる気」だけは人一倍だった。
彼をアシストしているうちに、そのやる気を実らせてあげたいと彼女は思ったそうだ。
なんとかしようと、職場のみんなが帰った後も2人で残って考えていた。
そうしているうちに、気が付いたら恋愛感情のようなものが芽生えてしまった。
彼女の話はそんな感じでした。
「それで?お前はどうしたいの?そのダメ所長のこと好きなんだろ?」
オレは聞いた。
「たぶん…かわいそうって思ってるだけだと思う」
「で?」
「本当にごめんなさい。あなたと別れたくない」
彼女は声を震わせながら言った。
オレは…正直どうしたらいいのか分からなかった。
今まで浮気をされた経験はない。
これまでは浮気されたらきっと、呆れて嫌いになると思ってた。
でも現実はそうじゃなかった。
浮気をされて「最低なやつ」だと思いながらも、たぶんまだどこかで好きだと思う自分がいる。
もうわけが分からなくて、ただ胸のあたりが苦しくて、なんだか分からないものが爆発しそうになりながらも、オレは聞きました。
「浮気してんのはそいつだけか?他に隠してることはないのか?これ以上何か出てきても、もうおんなじだよ。他に何かあるんなら今、全部話してくれ」
「他には何もないよ」
「どうやって信じればいいのそれ?」
「………」
この時のオレはたぶん、グチャグチャな感情で彼女を責める言葉ばかり言ったと思う。
彼女は何も答えられなかった。
「別れたくないって言われても、お前のこと信用できなきゃ今後無理なんだよ。何も答えないならとりあえずスマホ見せろ。他に何もないなら見ても大丈夫だろ」
「それは嫌」
「なんで?」
「……」
彼女はまた何も言わなかった。
嫌な理由すら何も。
本当はスマホの中身なんかどうでもよかった。
ただほんの少しでも、「まだ彼女を好きでいい」という材料が欲しかっただけなんだと思う。
見せてくれなくてもいい、会話をしてくれれば、何か言ってくれるだけでよかったのに。
それも叶いそうになかった。
それ以降何を言っても無言の彼女に、オレはわけの分からない苦しさが爆発しそうになり、思わずアパートを飛び出た。
なんか、身体中がブルブルと震えて胸が張り裂けそうだったっけ。
隠し事はあるかもしれないが…やり直す決心をする
あれから2日ほど経ったけど、胸を締め付けるような苦しさは相変わらず続いていた。
一睡もできていない。
しっかりと別れを告げてこなかったのが原因かもしれないと思い、オレはもう一度彼女と会うことにしました。
貸してた車やオレの私物も持ってきてなかったし。
その日の夜。
子供を寝かせてから話をし、オレは単刀直入に別れを告げました。
お前を信用することはもうできない、と。
「どうすれば信用できる!?あたしはどうしたらいいの!?」
彼女は泣きながら言った。
「こないだ話した時ずっと黙ったままだったろ?何も答えてくれない。ただ黙ったまま。話もできないやつをどうやって信用すればいいんだ?逆に教えてくれよ」
オレは言ったが、彼女は泣いたまま何も答えない。
ただ、嫌だ嫌だと泣きじゃくっていた。
オレはただそれを見て困惑していた。
ますます胸の苦しさがこみ上げてくる。
彼女との今までの思い出がグルグルと頭の中を回り、でもそれらがすべて現実のことではなかったかのような、不思議な感覚にとらわれた。
なんでこんなことになったんだろう。
今までずっと3人で楽しく過ごしていたのに、この幸せはずっと続くと思っていたのに。
どこで何を間違えたんだろう。
そんなことを思っているうちに、あるひとつの考えが浮かんだ。
思えばオレにも原因があったんじゃないか?
前の会社が廃業になってから、忙しくてほとんど彼女の家に行けなかった時期があったし、寂しい思いをさせていたのかもしれない。
廃業になると前もって分かっていたので、結婚を少し先伸ばしにしたことも、寂しさを強くさせた原因かもしれない。
そんなふうに考えていると、
もう一度やり直せるんじゃないか
そんな気持ちが込み上げてきた。
それに…苦しさが続くのはちゃんと別れてないからだと思ってたけど、オレはたぶんまだ彼女のことが好きなんだと思った。
このまま別れたら後悔するかもしれない。
彼女は相変わらず泣いている。
気が付けば夜中の3時をまわっていた。
「そんなに別れたくないのか?」
オレは聞いた。
「うん、別れたくない」
「オレのこと好きか?」
「うん」
「じゃもう一度やり直してみようか」
「…いいの?」
「オレにも悪いところがあったと思うんだ。だからもう一度だけやり直してみよう。スマホは見せなくていい。もう一度信じるようにがんばってみる。ただ、今の会社は辞めて欲しい。このまま働いてたらお前らの関係が終わると思えないし、安心もできない」
「分かった、会社は辞める。信じてもらえるように、努力する」
「あと、疑ってしまって気持ちがどうしようもない時には正直に言うから答えてくれよ?気持ちが解決しないまま、会話もできないままで楽しく生活なんてできるわけない。それに耐えて、答えてもらえないならたぶん無理だ」
「うん、ちゃんと答える」
「それと一応もうひとつ、また浮気したらもう無理だぞ」
「分かった、もう二度としない」
「よし、じゃもう同棲しよう。明日から一緒に住むわ。子供には明日、一緒に住んでいいかオレから聞いてみる」
「うん、ありがとう」
会話が終わる頃、オレはなぜだか知らないけど泣いていました。
相変わらず胸は苦しかった。
こうしてオレと彼女はもう一度やり直すことになったのでした。
彼女は明日、会社を辞めることを伝えてくると言っていました。
ちなみに所長とは、こないだゴムを発見した日のうちに関係を終わらせていたとのこと。
会社を辞めることを約束させたので、それは信じてみることにしました。
同棲を始める
次の日彼女は普通に職場に行き、オレもやることがあったので外出。
先にオレが帰り、子供と2人きりになったので同棲の件を話すことにしました。
ああなんか緊張する。
「オレさ、今日からここで一緒に住もうと思うんだ。どう思う?」
なんて言おうか散々悩んだ末、単刀直入に聞いてみることにしました。
子供は「ん~?」と不思議そうな顔をしたあと、笑顔でこう言いました。
「もう一緒に住んでるようなもんじゃん!Wi-Fiいつでも使えるようになるし、一緒に住んでくれると嬉しいな」
オレはWi-Fiかよ…。
彼女のアパートにはWi-Fiがなかったので、オレが来た時だけインターネットでゲームができる状況だったのです。
最近の小学生はすげえな。
Wi-Fiって理解したの結構最近だぞオレは。
「おお、そりゃよかった!そのうちパパになるからよろしくな!」
「こちらこそ!」
ああ、緊張したけどよかった…。
これで心おきなく同棲できる。
そうしているうちに彼女が帰ってきました。
やはり浮気をしていないと帰りが早い。
そして子供の許可がおりたことを報告。
彼女は喜んでいた。
彼女からは、仕事辞めるけど突然辞めるのはやっぱり無理で、1ヶ月後になる、という話をされました。
まあ、それは仕方がない。
彼女が仕事を辞めてからが本当の再スタートだ、と思いました。
浮気されたショックが大きかったのか、相変わらずまったく眠れない日々が続いたけど、この時は思っていました。
いつかまた3人で笑って過ごせる日がくるんだと。